■月下の咆哮「装甲怪異アルティメット入道」 池っち店長
不吉な黄金色。黄昏色の雲が渦巻く天空に、長大な白い龍が輪を描いていた。
龍には3対の翼があり、滅びの色をした雲と毒の霧を撹拌している。
転連魔獄のウロボロス。
都内の無数の人々が、心が破壊されるほどの悪夢に悩まされるようになって数日。悪夢は現実と成り、ちょうど都庁上部を割くように、観測史上最大規模の次元断層が発生した。
そこから溢れ出した「悪夢の申し子」と、その母体である「終わらせる者」は、一夜にして地上を悪夢の世界に変えた。
東妖軍は全戦力を持って迎撃戦を開始。恐怖を感じない怪異達の活躍に支えられ、悪夢の軍団を撃退し、勝利の凱歌を上げようとした煌々と輝く月光の中に……「ヴィルス」の軍団と「ウロボロス」が出現したのだ。
緊急メンテナンスを終えた「竜型決戦兵器」群により、ヴィルスの軍勢は効率的に排除されたが、高空を舞い、爆裂する光線と毒の霧を撒き散らすウロボロスには、決定的な一撃を加えることが難しく……
蹂躙され、深手を負った兵士達は、今ではその絶望の象徴を見上げるしかなかった。
彼らには守るべきものがあった。戦いのために備えてきた力と、誇りもあった。しかし今、彼らの目からは、戦う為に必要な、輝きが失せようとしていた……
「くぉらー!ヘビ公、飛んどらんで降りてこんかい!タイマンじゃ!ワシがブチしばいたる!!!」
黙示録的な光景にそぐわない、野卑な声が戦場に轟いた。
戦場にいる誰もが、一時絶望を忘れ、その声をの主を見た。そこにいたのは、1体の燃える怪異だった。
パンジャン入道。
元は「輪入道」という妖怪だったと聞く。怪異のくせに新しいもの好きで、特に兵器に興味を持つミリタリーオタクだった。富士の演習場に毎日のように出没し、忙しい兵士達の迷惑も顧みず、あらゆる兵器、兵装について聞きまわる。かと思えば「あらゆる車輪のあるものに取り憑いて、剛力で車輪を回転させる能力」で、エンストした戦車を運んだり、輸送部隊の手伝いをしたりで、いつの間にか兵士達の友人になっていた怪異だ。
遂には自分用のパンジャン・ドラム型兵装を与えられ、それと「合体」し、兵器と付喪神的に融合した新時代のメカ妖怪、「パンジャン入道」へと進化した。
その彼が、吠えている。届かぬ敵に対して不屈の闘志で。
彼はじろり、と燃える眼(まなこ)で周囲を見渡す。その目の炎は、兵士達の目にも広まっていった。
今や戦場では、同様に瞳を燃やした(物理的に本当に火がついていた)兵士達、怪異達がともに立ち上がり、装甲兵や巨大ロボもが意思を持つかのように燃え上がっていた。
その中央で、パンジャン入動が吠えた。
「合体じゃぁああああああああ!!!!」
パンジャン入道を中心に、炎のラインが四方八方へと広がる。炎によって繋がれた兵士、怪異、巨大兵器群は、雄叫びを上げながらパンジャン入道へと殺到する!
戦車が土台になり、巨大な脚部となる。竜型決戦兵器“黒雷”が、胴体中心部分を請け負った。その他兵士や怪異達はオーラに包まれネルギー体となり、巨体の一部となっていく。
最初のうちは説得力のある形に「合体」していく各パーツだったが、もう途中から開き直ったかのように適当に合体していった。玩具化は完全に諦めたタイプの合体である。完成した巨大ロボットの姿は、どこに何がどういう形で合体したのか、誰にも解らないツッコミの塊だった。
「爆誕!装甲怪異・アルティメット!NEWーーー道ーーーー!!」
全高100メートル、重さ不明!鉄と鋼と怪異の力と最新兵器、その他、気合とかがヤケクソめいて渾然一体となった巨大ロボは、豪炎を吹き上げて離陸した。
右手の巨大な鋼の杭、「喝・パイルバンカー」を振り上げて、ウロボロスへと突撃する。
「死にさらせボケーーーーー!!」
ゆけっ!我らのアルティメット入道!人と怪異の垣根を超えて、東妖軍全ての力を結集し、絶望の使者を粉★砕するのだ!!
注・戦いが終わった後はちゃんと皆もとに戻りました。安心。
■装甲怪異アルティメット入道
普通に6エナジー支払って出しても強いのですが、ルーラー「フィーバー」や「シュリケン」でユニットを三体出してから【合成召喚】で特殊召喚すると、ソウル三枚持ちというヤケクソめいた強さで場に出現します。