コラム 竜型決戦兵器 後編

東妖軍の決戦兵器、スーパーロボット、「竜型決戦兵器シリーズ」について解説します。後編です。

■竜型決戦兵器5号機 “伏雷”(フセイカズチ)

日本神話における伏雷は、雷雲の中で輝き走る稲妻を表すという。

伏雷のコンセプトは、
「山のように頑強で、単機にて戦線を推し上げる一騎当千の移動要塞」
であり、その電子頭脳には、地神であるニニギノミコトゆかりの祝詞がプログラムされている。

他の竜型決戦兵器の数倍にもなる巨体には、無数の砲塔が据え付けられ、完全装備の兵士を百余名、陸戦兵器を数台格納することができ、正に移動要塞と呼ぶに相応しい存在である。

だが、その大きさゆえに、活躍の機会は限られている。

■竜型決戦兵器6号機 “若雷”(ワカイカズチ)

日本神話における若雷は、落雷後の清々しい地上の姿を表すとされる。

他の竜型決戦兵器の殆どが20メートル強の体高を持つのに対し、若雷は2メートル半の超小型竜神である。
その開発テーマは、「従軍性」。

竜型決戦兵器はその特性上、他の兵士や兵器と共に運用することが難しい。
周囲の建造物への被害や味方への損害等、意識はするが、最優先されるのは敵の撃破、である竜型決戦兵器は、完全なコントロールの難しい自律兵器であり、正確には、兵器というよりは「人類の味方となって戦ってくれる神」である。

若雷は、そういった竜神を、
「軍のいち員として作戦行動可能な、スーパーソルジャー」
として開発した機体である。

人間と変わらぬその大きさから、一般兵との作戦行動も無理なく可能。瓦礫を撤去しての救出活動などの、細かい機微の必要とされる任務もこなす。
会話はできないが、作戦の全体像や司令を完全に理解する事ができ、ネット回線を通じて会話することすら可能である。

その高度な判断力と人間を超えたパワーと反応速度により、多くの市民と兵士を守り抜いてきた。

超小型のボディに有り余る力を持ち、地上活動時においてすら、最高速度は音速に迫る。
武器は口内の熱線砲以外は格闘戦のみであるが、頑健な侵略次元のDWMを一撃で引き裂き、音速の颶風のごとく暴れまわり、DWMの一群を数秒でバラバラにする破壊力を持っている。

他の竜型決戦兵器が「神」として崇拝の対象となっているのに対し、若雷が兵士達にとって「鋼の戦友」と呼ばれるのは、常に兵士達の盾となり、切り込む刃となってきた若雷に対する、称賛と信頼の想いからであろう。

■竜型決戦兵器7号機 “裂雷”(サクイカズチ)

日本神話において裂雷は、大地に降り立ち、岩や木を切り裂く落雷を表すとされる。

竜型決戦兵器としての裂雷は、落雷を思わせる轟音を響かせ戦地へ急行する、「空を飛ぶ竜神」として知られている。

その開発コンセプトは「即応性・順応性」であり、これまでに開発された竜型決戦兵器のあらゆるノウハウが盛り込まれている。

裂雷は、3形態に変形することができる。

第一に「弾丸形態」。

(新規イラストのごく一部のみ開示)

北区に存在する「サクイカズチ神社」では、基本この形態で祀られている。
その名の通り、「弾丸」として巨大なカタパルトから射出される裂雷は、都内だけでなく、戦地めがけてマッハ2の速度で飛来し、日本全土をその防衛圏内とすることに成功している。

第2形態は「空戦形態」。目的地についた裂雷は、巨鳥の如きシルエットの空戦形態へと変形し、状況を観察、軍部へデータを送信し、場合によってはそのまま戦闘を行う。

第3が陸戦形態。

(新規イラストのごく一部のみ開示)
空戦時の翼を腕部として、カマキリの如き竜神へと変形した姿の裂雷は、その戦闘力を全て開放する事となる。
両腕の電磁メスは、20m級のDWMを一撃で両断する威力を持つ。

通常、竜型決戦兵器は首都東京を防衛する守護神であるが、裂雷と若雷だけは、その作戦行動範囲を日本全土と広く設定しており、急行した裂雷によって救われた人々は地方にも数多く、都内北区のサクイカズチ神社は地方からの「お礼参り」の参拝客で常に賑わっている。

■竜型決戦兵器8号機 “大雷”(オオイカズチ)

(新規イラストのごく一部のみ開示)
日本神話における大雷は、強烈な雷の威力そのものを表すという。

竜型決戦兵器・大雷は、他の竜神とは全く違う技術体系で作られた、「呪術兵器」である。

その本体は、サラマンダーエンジンと直結された直径5メートルの「竜神の面」であり、そこに憑依した「怒れる神のエネルギー」そのものを竜神の霊体として出力して、巨竜のゴーストを生み出す。
そして、そのゴーストに鎧をまとわせた姿をオオイカズチと呼ぶ。

日本には、強い怨念を持って死んだ後、人々に災厄を齎す悪神となった、いわば「祟り神」をも信仰し、その怒りを沈め、時にはその荒々しい力をより悪しき物にぶつけて相殺する、という神事が存在する。

そういった呪いの力を守護者とする技法を、竜型決戦兵器へと転用したものがオオイカズチだと言えるだろう。

ひとたび顕現したオオイカズチは、制御不能の暴れ狂う災厄として、周囲のものを破壊し尽くす。
よってオオイカズチの起動承認がなされるのは、侵略次元による「大規模で、壊滅的な侵攻」が行われたときのみである。

今までにオオイカズチの起動承認が降りたのは第二次次元防衛戦の時のみで、地表市街地(防衛都市東京の「本体」は地下にある)の被害の70%は、オオイカズチによるものと判明している。
しかし、かつてない規模の大侵略を撃退することができたのもまた、怒れる祟り神、オオイカズチの戦果なのだ。

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